バリュー投資関連書籍 京都大学の経営学講義
『京都大学の経営学講義』シリーズは、日本における長期バリュー投資の第一人者である奥野一成氏がホストとなり、京都大学で行われた講義を、書籍にしたものです。
この書籍は大きく二つのパートからできています。
一つは奥野氏が高く評価する企業の経営者が、自社の経営哲学や成功の背景について語るパートです。各社の歴史の中で、経営哲学が過去の意思決定や行動にどのような影響を与えてきたか、そのダイナミズムを知ることができ、どういった企業が長期で成長していくのかを考えるうえで非常に参考になります。
もちろん、企業視点では本講義は京大の学生へのアピール目的であることは割り引いて考える必要がありますし、また企業毎に自由に内容を決めているせいかわかりづらい章もありますが、それでも参考になる部分は多いです。
備忘録的に特に参考になった章は下記の通りです。
1巻1章:積水ハウスの海外展開における進出国の選び方
1巻2章:ホシザキの差別化の考え方
1巻4章:シスメックスのビジネスモデルの考え方
2巻2章:ピジョンの経営ビジョンに基づく経営のあり方
3巻2章:キッコーマンの海外展開における取り組み方
3巻3章:マルイの市場創造の考え方
もう一つのパートが、奥野氏自身による、長期投資すべき銘柄の選定基準に関する話と、川北名誉教授による株式投資のあり方に関する話です。
奥野氏はバリュー投資の第一人者として農林中金バリューインベストメンツを率い、「売る必要のない株式しか買わない」という考え方で投資先の選定をしていますが、その考え方の一端に触れることができます。①付加価値の高い産業かどうか、②競争優位(参入障壁)があるかどうか、③長期的な潮流を有しているかどうかの3点の「儲ける仕組みのある企業」に投資をすると書かれていますが、その具体的な考え方について学ぶことができます。
川北氏のパートは、投資とはかくあるべきか、といった話ですが、実際の投資パフォーマンスの比較分析なども行われており、視座を広げるという観点では、非常に有用なものとなっています。
以上、「京都大学の経営学講義」シリーズのご紹介でした。
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