ファンダ分析で中小型お宝株探し

中小型株の銘柄分析と定点観測をします。

中小型株お宝銘柄探し 9366 サンリツ

サマリー

サンリツは梱包の強みにより差別化をしている倉庫事業者です。PER・配当利回りいずれの観点でも十分に割安で、事業の安定性を考えると下値は限定的、一方で新しい中期経営計画の発表や、毎年定番の上方修正の可能性など、EPSやPERを上昇させるイベントも今年中にあると想定され、比較的ローリスクで持ちやすい銘柄と想定されます。

ファンダ分析①事業内容と成長性

サンリツは梱包に強みを持つ倉庫事業者です。その出自は米軍や防衛所向けのビジネスにさかのぼり、米軍や防衛省から高い評価を得ていた梱包のケイパビリティを現代にいたるまで磨き続けています。

サンリツの事業を見るうえでは、サプライチェーン別、顧客業界別、売上地域別という見方ができますが、いずれも単独ではサンリツの事業の全体像を捉えられませんので、複合的な目線で見ることが必要です。
サプライチェーン別は、各事業の売上と利益率を見ることができますが、実際の顧客に対してはトータルソリューションとしてそれらを組み合わせて売っていくため、単独で見ることにあまり意味がありません。
そのため、本来的には顧客業界別で見たいのですが、こちらも問題があります。というのも、顧客業界別の利益率が年によって大きく異なり、結局は案件ベースで利益率の高いものを取れるかどうかが重要だからです。具体的には、2017年3月期には小型精密機械の利益率が高かったにもかかわらず、2018年3月期には大型精密機械の利益率が高くなっています。しかも2019年からはこの開示はなくなりました。
最後に地域別ですが、現在は90%以上が日本のため、現状を分析しても何も出ません。一方で今後北米を伸ばすと明言しているので、地域別も頭に入れる必要があります。

以上を踏まえて、注視すべきポイントは下記の3点です。

  • 北米事業は今後どれだけ伸びるか/利益貢献するか:サンリツが今後の売上成長のドライバーとして積極投資を行っているのが北米事業です。既に広大な土地を購入済みで、2019年10月には新倉庫が完成します。またまだ土地は残っており、需要の拡大に応じて倉庫を拡張できます。新倉庫のあるノースカロライナには、日系企業が170社あり、新規の引き合いもあるということを社長が明言しています。
    一方でQ&Aでも社長が答えている通り、北米の新拠点は、商社機能と製造機能を併せ持った拠点となっており、ビジネスとして安定させるまで時間がかかると想定されます。ここについて新中期経営計画でどのような絵をかいてくるかを読む必要がありますが、2020年3月期で、立ち上げを含む半期の売上を2.5億円積み増しており、社長のQ&Aでも新倉庫で1,000万ドルの売上を期待できるとのことですので、恐らく最終年の売上で10億円弱の上乗せになるのではないかと思います。

  • 国内でスポットを含む新規案件を獲得できるか:2020年3月のサンリツの営業利益は、倉庫の効率化などが進んでいるにもかかわらず、減益予想となっています。ノンアセット型新拠点などを開設してキャパシティを増やしたにもかかわらず、売上が下がっており、稼働率が下がっているためです。低採算案件からの撤退など、長期的に見て収益を改善できる施策を打っていますが、代わりの案件を取っていかないと、稼働率並びに収益性が低いままとなってしまいます。会社が期初予想を保守的に見すぎる(パイプラインをあまり予測に入れていない)一方で、景気に左右されやすいビジネスでもあるため、見立てが難しいです。中期経営計画でのストレッチをどのように見せてくるかですが、前回は最終年までに+15%くらいでしたので、今回も北米と合わせた総額として同じくらいは乗せてくるのではと思います。

  • さらなる効率化は進むか:これまで倉庫事業は自動ピッキングやマテハン機器の導入などにより、効率化を進めてきました。直近は、以前よりも稼働率が低い状態で、以前と同じ利益率を出せるようになっており、こうした取り組みが倉庫事業内で拡張、または梱包事業、運輸事業に拡大できるかがポイントになります。
    なお倉庫事業の1Q利益は順調に推移しています。他の事業への拡張性について、Q&Aでの社長の回答は一貫して、慎重に見極めるということなので、短期での効果はあまり期待しない方がいいかもしれません。

ファンダ分析②株価水準・割安度

サンリツ 株価 チャート

チャートは引用/転載自由の株ドラゴンさんにお借りしています。

サンリツの650円強という株価水準は、PERで7倍強ですので、一般的に見ても割安な水準に見えます。これは今期の減益予想に対し、1Qが予想に合う形で推移しており、増益基調に戻す可能性が低いと考えられているためです。

もともと、倉庫事業という渋めの事業であり、人気が出づらく値幅があまり出ないということもありますが、加えて今期の予測、進捗に特筆すべきものがないため、あえて買わなくてもいいか、ということで停滞していると考えられます。

なお配当利回りは4%を超えており、倉庫という事業の安定性を踏まえると、配当狙いの投資としては妙味がありそうです

株価上昇トリガー・投資戦略

そんなサンリツですが、過去2017年の5月から2018年の2月にかけて一度50%以上の株価上昇を経験しています。最初に期末の決算短信にて、中国事業の撤退が完了し、再び増益路線に戻したことが確認されました。その後の業績予想の上方修正、自動ロボット制御ピッキングシステムの導入といったニュースが継続的に出る中で、投資家が強気のモメンタムを形成していったためで、最大でPERが14倍強まで上昇しました。

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今後同じことが起こるためには、投資家が再び強気のモメンタムを形成する必要があります。そうしたイベントとしては、次期中期経営計画の発表と、業績の上方修正が考えられます。

  • 次期中期経営計画の発表(11月末?):現在サンリツは2020年3月期までの中期経営計画の最終年にあり、また新たな中期経営計画を策定すると想定されます。
    そこで、北米事業の成長や、国内における売上の回復などを盛り込んだプランが出てくれば、PERの目線が切りあがります。なお前回は2016年11月30日に中期経営計画を出していますので、今年も同タイミングで出てくる可能性が高いです。
    ただし、前回は中期経営計画が出てきた直後は無反応でしたので、今回も足元の通期業績予測の上方修正があるまで、株価には反映されない可能性があります。

  • 半期/通期予測の上方修正:1Qのファイナンシャルを見る限り、上方修正が期待できる水準ではありませんが、サンリツは期初に予想を保守的に出し、10月末に修正するということを過去5年毎年やっていますので、今年も同じことが起こる可能性は高いです。ただし、半期分でなく通期の上方修正が行われないと、株価の反応は弱い可能性が高いです。

サンリツの株価が上昇するためには、投資家が自信を持てる数字が出てくる必要があります。一方で既に現在の株価水準は、PERの観点でも配当利回りの観点でも割安なため、今後大きく下振れすることも考えづらいです。ですので、ある程度配当に期待しながら、今年の末から来年にかけてイベントが起こるのをじっくり待つのが良いと思います。仮に中期経営計画が相応に保守的だった場合は、値上がりを狙うことは難しくなりますので、自分の目線に合わせ、撤退も手です。

その他のリスク

事業の継続性・成長性に関するリスクはありません。投資家の期待に大きく影響する、中期経営計画が保守的に出てくることが最大のリスクです。

以上、サンリツの銘柄分析でした。
サンリツの株価の推移については11月5日頃に定点観測記事を出します。

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