ファンダ分析で中小型お宝株探し

中小型株の銘柄分析と定点観測をします。

コラム 決算発表と株価

本決算、四半期決算は株価が大きく動くタイミングです。
そのため決算による水準訂正を狙った短期投資は一つの手法となっていますが、自分なりの目線をもって取引をすることができないと、悪く言えばギャンブルになってしまいます。私も過去にはそのような失敗をしてきましたので、決算と株価の関係性について今現在の考え方を記していこうと思います。

株価=EPS×PER

株価にはいろいろな評価方法がありますが、事業性を評価して売買を行う場合には、EPS(一株当たり純利益)とPER(株価収益率)で考えるのが一番良いと思います。

EPSを実績でみるか、予測数値でみるかという議論は後に回すとして、EPSは端的に言えば『その企業が現時点で1年間に生み出せる利益』です。それにPERをかけることで株価が計算されますので、PERは『その企業が将来にわたって生み出せる利益は、現時点で1年間に生み出している利益の何年分か』を表すと考えるとわかりやすいです。

  • 例えばEPSが100円、PERが10倍で、株価が1,000円の銘柄があるとします。
    その場合この銘柄は、今現在の年間利益の10倍の価値があると思われています。よほどサイクルの短い業界でなければ、10年程度は事業が継続するとみて問題はないので、「10年間同じ水準の利益を上げる力がある」と思われているようなイメージです。

  • 次にEPSは100円ですが、PERが30倍で、株価が3,000円の銘柄があるとします。上記同様に考えると、この銘柄は、今現在の年間利益の30倍の評価ととらえられます。息の長い事業であっても、事業期間を30年でみるというのは非現実的ですので、例えば「今後10年間で、利益が3倍以上に成長し、10年間平均で利益が3倍になる」といったイメージでとらえることになります。

つまり、PERは『事業の成長性』と『事業期間』の掛け算の数字としてとらえるとわかりやすいということです。事業によって事業期間には長短があるので、そのあたりも踏まえて自分なりの水準を考えることが肝要です。また最初に述べた、EPSを実績でみるか予測でみるかという点については、『事業の成長性』の発射台が変わるだけですので、自分が考えやすい方でよいと思います。

決算発表と株価

前段が長くなってしまいましたが、ここからが本題です。決算発表には四半期決算と本決算がありますが、まずは本決算から考えていきましょう。

本決算では、1年間の結果としての純利益と、来期の予測としての純利益の数字が発表されます。そのため、株価=EPS×PERのうち、EPSが修正されることになります。
同時に、今期までの成長率と、来期の予想成長率などを見て、PERが修正されます。
なぜならPERの内数には『事業の成長性』があるからです。

四半期も同様ですが、四半期決算ではEPSの直接的な修正は、「通期予測の上方修正」「通期決算の下方修正」が発生しない限り起こりません。それらが起こる場合は本決算と同じ、起こらない場合はPERの水準訂正のみが起こります。

この水準訂正がどのように行われるかは、発表された数値と投資家の期待値のギャップの大きさに基づきます。感覚にも合致すると思いますが、成長すると思われていなかった銘柄が大きく成長した場合、EPSの上昇分が素直に株価に反映される一方、成長が期待されPERも高い銘柄が高成長しても、EPSの上昇分ほどには株価は上昇しません。

決算発表を利用した短期投資

上記のように、決算発表のタイミングでは大きく株価が動きますので、決算発表による水準訂正を狙った短期投資は、よく行われている手法の一つです。

具体的には、決算発表時の来期予測のポジティブなサプライズや、上方修正に期待して銘柄を購入します。決算発表であれば、例えば今期特殊要因や先行投資でへこんでいるが来期以降成長に回帰する、今期の後半に行った構造改革がうまくいっており、フルで寄与する来期は期待できる、といった銘柄を狙います。上方修正も同様ですが、上方修正の場合は、例えば第一四半期の進捗率を見て判断するといったパターンもあります。

大切なことは、多くの投資家が気づいていないギャップに目を向けることです。
第一四半期の決算を見て半期決算時の上方修正を狙うといった手法は私もかつてトライしたことがありますが、ある意味誰でもできますので、そんなに大きくは上がりません。一方でネガティブなことが起こると、大きく下げるので、トータルではおそらくマイナスでした。この手法で成功されている方もいますが、その銘柄の四半期偏重のクセ、上方修正のタイミングなどを長年の経験から理解しており、一朝一夕でまねるのはやや難しいと感じます。

その観点で、事業を読む力があるのであれば、決算発表時の来期予測を狙うというのがおすすめだと思います。上述のようなギャップであれば、決算説明資料を読み込むと同時に、決算短信なども読み、複合的に状況を理解する必要があるため、誰にでもできるものではないからです。また、予測はあくまで予測ですので、経営者のキャラクターや、その企業の置かれた状況が影響します。経営者が強気予想を出すタイプか、弱気予想を出して上方修正を繰り返すタイプか、その企業にとっての強気予想を出すべきタイミングか(中期経営計画の最終年、50周年など)、そういった情報も踏まえて判断すれば、ローリスクの銘柄を見つけやすいと思います。

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上記は6092エンバイオのチャートです。5月の半ばごろに650円くらいだった株価が、5/15の決算発表後から継続的に伸び続け、最高で1,100円にタッチしています。

エンバイオの2019年3月期は、想定通りにビジネスが伸びなかった子会社が赤字を計上しており、その赤字会社の解散をしました。結果として営業利益は前年比-20%、当期純利益は赤字という状態でした。EPSがマイナスのためPERを算出することはできませんが、市場からの期待は最悪という状態でした。なお2018年3月期のEPSが71円でしたので、1年前のEPS水準でみてもPERは10倍を割っています。
しかしながら、赤字会社を解散しているので、2020年3月期には営業利益が元の水準に戻ることが見えており、かつ当期純利益も、解散にかかる費用や減損によるマイナスがなくなって黒字回復することが見えていました。もちろん大前提として、既存事業が最低でも前年水準をキープできるという判断は必要です。

ここまで理解して、決算前にエンバイオを買っておけば、仮に現在まで持ち続けても+40%、1,100円で売っていれば+70%を稼ぐことができました。

リーガルä¸å‹•ç”£ 株価 ãƒãƒ£ãƒ¼ãƒˆ

こちらは、上方修正期待を外した場合の事例で、3497リーガル不動産です。
私は決算狙いで入ったわけではなく、以前から保有していましたが、売り時を誤ったがために機会損失が発生しました。

こちらの銘柄では、6月半ばに第三四半期の決算発表があり、それを境に最大1,600円をつけていた株価が1,100円以下に転落、現在も1,200円程度のところにいます。

まず、3月後半にはこの銘柄の株価は1,200円程度でした。しかし半期の決算の時点で、営業利益が既に年間目標の8割弱まで来ており、多くの投資家が第三四半期に上方修正を出すだろうと期待しました。その結果、決算発表までに期待から株価が上昇し、決算の当日には1,600円を付けました。しかし実際は第三四半期を終えて85%の進捗という水準で、上方修正は出されませんでした。その結果、株価は急落しました。

このように、数字だけを見て上方修正期待の売買を行うと、おおきなダメージを追うリスクがあります。特に不動産は案件サイズが大きく、四半期ごとのボラティリティが高いので注意が必要です。

なおこのケースの正解は、期待で上がっているうちに売ってしまうことです。わざわざ決算を待たなくても、例えば1,500円で売っていれば、25%の上昇分をとれました。
上方修正狙いはあまりおすすめできませんが、やるのであれば期待分だけをさらうのが低リスクでおすすめです。

以上、決算発表と株価の関係性についてでした。
キャッシュを効率よく回そうと思うと、決算前後の短期投資が魅力的に見えてしまいますが、本当に自分が自身をもってプレイできる手法を見つけるまでは、安易に手出しをしないことがおすすめです。

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